猫の電車はさらにパワーアップしてゴー。
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この物語は実家の母の「野良が小屋に子猫をうんだ」の電話から幕があがっ
た。その母から、同じ電話がまたきた。
物語は第二幕に突入というべきか。
夫の紺碧君を蒸発においやった野良婦人は優雅に恋三昧の時を過ごして、色
とりどりの子を生んで二度目のお産をしたという。
赤、白、グレイ、まだらの四匹で彼女の奔放な恋が連想された。玩具屋の店先
に並べておきたいほどプリテイな子猫たちだった。母はメロメロだったのに、
その子猫ちゃんが三匹いきなり姿を消したのだ。さらわれたかも。
残ったまだらちゃんは野良婦人と毛色も性格もウリフタツであった。
母は母以外の誰とも馴染まないまだら猫二匹と暮らしていた。野生そのままの
性格を残す野良婦人親子と母の生活ははたから見て可笑しかった。
そのくらし振りを紹介すると、野良婦人とその娘は物置小屋に生活の基盤を
置き、食事は母屋の母の台所で貰う。居間のソフアに古シーツのカバーをかぶ
せて、そこでテレビを見たり母の愚痴を聞いてやったりしているらしい。
傑作なのは母以外の誰をも怖がることである。集金や宅配人の声を聞いただけ
で、目にもとまらぬスピードで逃げてしまう。
私がこっそり侵入したら、あわてふためいた二匹は二重サッシのガラス戸を
器用につめでこじ開けくぐりぬけて逃げた。障害物競争に出たら一番まちがい
なしである。網戸をはずして出入りするのは朝飯前だという。
この野良婦人は避妊手術をしていたが油断していたすきに娘が妊娠して子を
生んだと言うわけだ。ちるちる、みちる兄妹の半年あとに生まれた妹猫のまだ
らちゃんがママになったわけだ。例のごとくカメラを持って見に行った。
三匹は夢のように素晴らしい子猫だった。やっぱり色とりどり。
我が家の九匹の子猫たちとはイトコ関係になるが、まったく色合いが違ってい
た。
母は可愛くて手放したくないのだが、ご近所の冷たい眼差しに耐えられなく
なっていた。庭づたいにご近所の庭に行くからである。
主人が我が家には九匹も子猫がいるんだから、あと三匹増えても同じだから引
き取ってあげなさいと言ってくれた。
こんな、いきさつを経て来た三姉妹猫の一匹はやや長毛の黒猫であった。
のどの部分に白毛があったので、月の輪熊からの連想で<ベア>と名付けた。
ベアはともかく人間が好きらしい。家族の出入りに敏感で、かならず出迎えに
くる。人間のそばにいたいと自己主張する猫である。母猫にも、祖母猫にもな
い気質である。父猫からの遺伝としか言いようがない。
我が家の九匹の子猫たちより二十日は遅く生まれたのに、三姉妹猫はやや大
きかった。我が家の子猫たちは数が多すぎてお乳が足らなかったのかも。
三姉妹は数日はおびえて小さくなっていたが、いつの程か、みんなと一緒に
みちるママのお乳に吸い付いていたのには感動した。 (次に続く)
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<おぼえメモ>

ベア 平成10年4月20日に実家の
野良婦人の二度目のお産の時の
娘の子として誕生。
野良婦人の孫。

我が家では人間大好きナンバーワン。
(いや、ナンバーニャンです)
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