またたび館の名誉会長
『黒兵衛』をファションチェック。
赤のソフア、象柄のクッションのまえに堂々と
寝そべる黒兵衛。
素晴らしい漆黒の剛毛。
三角の短い尻尾。
それはハンガーのあたま状に曲がった骨のため。
尻尾に指を一本入れて持ち上げると、『黒兵衛』の
逆さ吊りができる。
立派な大猫になっても三年前と同じに吊れた。
猫としてまれにみる肉体の特徴。
三年前に出奔した時の首輪をしたまま戻って来た。
世間話と食事をしたあと、サーと引き上げる。
オス猫のダンディズムにあふれている。
ファションチェックなぞする方が軽薄なことだと
恥ずかしくなる。
『黒兵衛』とはそんな猫である。