10 草々のおしゃべり
桃太郎よ、庭の草たちのおしゃべりが聞こえるよ。
やまごぼう「ぼくは観賞にたえる植物だと自負しておる。茎と葉の立派さでは君達を圧倒
している。黒く艶やかな果肉に包まれた種の魅惑に鳥たちはイチコロだよ。
それにしても、やまごぼうという名前が気にいらない」
いのこづち「種を猫のからだにくっつけるのでは、まあ、ぼくがピカイチだろう。
ぼくらの種を(くさじらみ)なんていうのは、失礼だと思うよ」
えのきぐさ「ぼくの自慢は、まあ見てくれたまえ。このほとんどボロボロの姿。虫に好か
れて身がもたん! 君達の中でぼくがナンバーワンに美味しいというわけ」
はなたで「虫に食べられて喜んでいるのは、草としては、頭のさがる思いよ。
わたしは、自慢に聞こえるかもしれないけれど、今は庭の花形のはずよ。
秋風に乗ってわたしはピンクの波になる〜」
なぎなたこうじゅ「つつましいのが、わたしの取りえ。でも薬草なのよ」
えのころぐさ「猫じゃらしと呼んでいいよ」
みずひき「わちきだけは、望まれてこの庭にありんす」
からすうり「誰かさんほどは、嫌われていないと思う。昔の子供たちはぼくの実を、
玩具にして遊んだよ」
やぶからし「嫌われている誰かさんとは俺のこと?
俺の絶大な精力にはおめえたちはタジタジだろう?
(やぶを枯らす)と言うのが俺の本名だからな。
(貧乏かつら)とも言うらしいけど、そんなの言うのは皆のヒガミ。
今年は俺がこの庭を制覇した。俺の天下だ。
文句あっか!」
へびいちご「どうでもいいけど、わたしを踏みつけにして皆さんのさばらないでよ。
わたしは、この庭では芝生がわりにされて好かれているのよ。
ほんとなんだから!」
と、こんな風に草たちは、秋の庭でしゃべりあっているいるように聞こえるのです。
桃太郎よ君におくる、レターの10回記念と10月10日をかけて、我が家の庭にのさば
っている秋草10種を選んで、名前をひとつづつ調べて会話を組み立てました。
君が中学生くらいななった時に読んでもらえるかな。
1999/10/10記