9 『なぎなたこうじゅ」という草

片側だけ薄紫の小さな花が並んでいる草が庭にたくさん姿を現した。
例年は、姿をあらわすや否や、ただちに抜いていたので花を見たことがない。
今年は、ちょっと油断していたら、夏を越して花をつけた。

こころ惹かれるような、雰囲気のある花で、名前を是非知りたくなった。
『なぎなたこうじゅ』という意味ありげな名前がついていた。
薙刀状に片側だけに花が並ぶからの和名で、全草を乾燥させたのが漢方のコウジュで解熱
利尿剤に用いるとあった。
「おまえさまは、漢方関係の草さまでござったか!」

雑草を天敵のように駆除することに誠心誠意をつくした祖母と母。
彼女等は生涯のあらかたを草取り作業に捧げたと、私は思う。
祖母の坪庭は一本の草の侵入もゆるさない緑の絨毯の苔が誇りだった。
高い香りを放つ、大輪白百合のカサブランカに魅せられって、カサブランカを咲かすこと
にすべての情熱をかけているのは私の母。草一本も無い、猫の額の庭を自慢する私の母。

ああ、私はつらい。

直系の私は、婚家先では草は抜くなと言われたり、舅なきあと、見かねた母が雑草征伐に
来たり、今は、うっかり草に情けをかけたりして腰が定まらない。
私の夫の、この家の主人、つまり桃太郎の祖父は、「草はあってよし。無くてもよし。」
と、天下泰平にのたまっておられる。

                            1999・10・3記

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