8 母の敵の『やぶがらし』
里の母が今より体力があった時に、草取りに来てくれたことがあった。
草取りが何より好きな母は、うちの庭を見て歓声をあげた。
「征伐してやる悪党め」と正義の鎌をふりかざした。
仕事がすんで、「これが、最も悪い奴、根こそぎ引っぱり出したから、来年は楽だよ」
母によって、征伐された悪党どもは、まとめて縛りあげられていた。
母が目の敵にするだけあって、悪党の名前は『やぶがらし(薮枯らし)』というのだ。
もっともポピュラーな蔓草で『からすうり』をおさえて、我が家ではナンバーワンの草。
今年の夏の酷暑には、サルビアと紫陽花たちへの水やりが精一杯だった。
草は狼藉のかぎりをつくしていた。
『やぶがらし一族』はつつじ城を配下に抑えて、我が世の夏を謳歌していた。
つるから、二本のひげを繰り出して、どんな所でも登っていくし、低い庭木は覆いかくし
てしまう。
『やぶがらし』には『びんぼうかつら』という別名があると辞書にあった。
1999・9・2記