50 ラルフ氏へ だいたい4ヶ月が経ちました
ラルフ様 御机下。
六十六歳の記憶力には絶望しました。
が、しかし 源 重之(みなもとのしげゆき)の歌に行き当たり我が衰弱の脳味噌は微かながらも
ある反応を示しました。報告します。
風をいたみ岩うつ波のおのれのみ くだけて物を思うころかな 源重之
歌の訳としては『風が激しく、岩に打ちあたる波がくだけるように、あの人はつれなくて私だけが心も
千々に砕けて物思いするをするこの頃であることよ』叶わぬ恋に身もだえる歌。
この歌を我が脳は勝手に解釈して自分の物にしてしまったようです。
平穏な日常の暮らしの中の我が内心に巻き起こる風も、岩のような頑迷な頭脳とて私そのものである、愛しいではないか。
心の中を吹きすさぶ風も打ち付ける波にも動じない岩のような心持ちもすべてがわが内側におこる
命あるための現象であることをしみじみ知ってすべてが愛しい今日この頃であります。
(2010.06.29)