
ホームズ殿
最初にも話したように、女ともだちは僕からみたら魅力的な女性なのだ。
彼女のことを話し出したら止まらなくなってしまう。今回の老人問題、それも死に至る生命と
いうような人間尊厳にかかわる重大問題をホームズに問いかけていながら、彼女のことになると
平常心を忘れて夢中になってしまう。
もう少しだけ話させてくえたまえ。彼女からの手紙をホームズにも読ませてあげよう。
近況報告の手紙ながら、彼女のエスプリがよくでていると思うのだ。
あこがれのホームズに読んで貰えたらきっと光栄におもうことだろうよ。彼女には事後承諾を頼
むから心配はいらん。
ワトソン先生。御前に。
長旅から帰宅した翌日にすぐ常連のカラス達が姿をあらわしました。
カラスは人間と同じで舌がこえる。 最初はポップコーンやパンでハッピーだったのに、あると
き肉の脂身をだしたらもうパンには見向きもしない。さらに脂身に赤肉がまじっていたらとても
ご機嫌。 それから古くなった赤肉をあげたら、もう脂身には見向きもしない。 冷蔵庫が空な
ときでも、姫りんご木の枝にやってきて餌を催促するので、あり合わせのものを餌皿にのせてや
るが、それが気にいらないと味見をすることもなく、もっといい餌をくれと催促するか、あるい
はそのまま飛び去っていく。 そうしたら、こちらも意地である。 あげた餌をありがたく食べ
なければ、ほかの餌はやらない。 それが数回つづいたら、カラスが気づいたらしい。 餌皿に
なにかの餌がのっているかぎりは新しい餌はもらえないと。 そこで、カラスは私のうわてをと
ることにしたらしい。 つまり、食欲のわかない餌であってもそれを持ち去って私の見えないと
ころに隠す。 そして空っぽになった皿のそばでさらに餌を乞うのである。
、、、私がカラスに興味があるのはその“したたかさ”のゆえです。
私がカラスを仕込んだのではなく、カラスが私に生活の知恵をみせてくれる。
以上が手紙であるが、このあとに共通の思い出にまつわる数行と、ぼくの健康を気遣う言葉がある。
嫌われ者のカラスでも、彼女の才知にかかると立派な教科書になるのだ。
僕は彼女の才知をしみじみと感じるわけである。
霊魂を信じることと、カラスからも学習するという対立しない両面を面白いと思うのだ。
心情において前者は拒否するが、後者のカラスは教科書に載せても良いと思う。
現在の日本社会では、もっとも困り者のカラス礼賛論が教科書に載ったら、どれほどの物議を
かもすか、、、恐ろしや。亡霊を負かすほどの物議をかもすことだろう。
カラス何故鳴くのカラスは山に可愛い七つの子があるからよ 可愛 可愛とカラスは鳴くの、、、
老いさらばえた母ガラスは、何と言って泣くのであろう。
ワトソン
(2010.02.07)
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