152 ワトソンの復帰(ひょうたん考、続)

         

 猛暑の昼下がり、瓢箪のつくる日陰でゆっくりする。
 ホームズ、ホームズと言ってホームズの若かりし頃の幻影を求めている自分を見いだしてしまう。
 時は流れる。とどめようが無い。
 ここで老いて朽ちるのであれば其れも良い。

 千なり瓢箪といえば、まっさきに豊臣秀吉を連想する。
 千なり瓢箪の絵柄を彼が戦場の旗印にした心情は、いまの僕にはよくわかる。
 勇猛果敢に世の中を制覇していった彼の熱くたぎる情熱は、ぼくの人生にだって少しはあった。
 本当は、あったような気がするだけかもしれない。

 だいいち戦いは嫌いだった。
 ひとの上に立つのは最も嫌い。
 あたりを気にしないことをモットーにしてきた。
 というより、自然にそうなったのだ。
 しかし、ホームズだけは僕の見果てぬ夢だったよ。

 

 


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