
ホームズ殿
一線から引退したとはいえ、現実には生きているのだから
身辺には事件が起きる。
現役であれば、颯爽と解決に乗り出すのであるが、哀しいかな
老体である。
眼圧もあがり、緑内障の治療のさなか行動は思うにまかせない。
しかし、ホームズ君、ぼくは決して老いぼれてはいないよ。
あらゆる、情報の収集と長年の経験による慧眼をもって、
事件は解決に導いた。
今回の事件には感度良好の録音機を採用したのだ。
胸に超小型テープレコーダー
を忍ばせてね。
ホームズと事件解決に奔走していた時代は、君は『虫眼鏡』を
愛用していたね。
隔世の感を強くした。
今は事件も解決して、元のようにのどかな隠居に戻った。
気がついたら
一本植えた『ひょうたん』がこのように繁茂していた。
たった一本のひょうたんがこのように何百、何千という葉を繁らせた。
瓢箪だって、どれだけ実を付けるか知れない。
『千なり瓢箪』がぼくの庭にできている。
こんなのって、タネの不思議。
生命の不思議だよね。
ホームズ、ぼくは生き返ったよ。
瓢箪によって、またページに復帰した。
ホームズが船旅に出ていることは知っている。
もう、ひとりでも寂しくない。
ワトソン
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