126 古き友を尋ねて(Mr. RCのケース)





(その2)Mr. RCのケース。

その同じカリフォルニアの旅行の時である。
僕は数年前に亡くなった姉のご主人を訪問した。 
彼は88歳ぐらいだったろうか。 
それでも、自分のアパート住まいで、通いの家政婦さんがいた。 

昔、写真家だったので、アパート中に白黒の写真が飾ってあったが、
彼自身は半分朽ちかけた古木の雰囲気であった。
ところが、女性連れの僕の訪問で活気づいたかれは、戸棚から長らくほったら
かしにしていたカメラを取り出してきた。 
そして僕と連れににポーズを依頼して、写真を撮り始めたのた。 
その生き生きとした様子に、僕等は全く眼をみはったものだ。 
ただ呼吸をしていることと、生きていることの違いがあらわであった。
そこで僕達は再会を約束して、別れをつげた。

それから一年半、またカリフォルニアにドライブすることになった。 
彼のアパートに長距離電話をかけたが返事がない。 
数日後、当地について電話をかけても返事がない。 
そこで娘さんに電話をかけた。 
彼女の第一声は「父は死ぬところです。」との叫びであった。 
早速きいた病院にかけつけたら、彼は酸素マスクをつけて横たわっていた。 
僕がやって来たことを理解したかどうかは、知る由もない。 
彼は翌日死去したと僕は知らされた。








 


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