雲と同様、海にもいろいろな色と波の表情がある。
最近はどの船も安定装置をそなえているので安全になったが、
それでも恐ろしい高波に翻弄される場合がある。
その昔、未知の土地を探して航海したコロンブスやクックの苦労は
いかばかりかと思いをはせる。
へらたい地図は役立たずだから、地球儀をもちだしてをその進路を指でたどる。
人間は全く小さい存在なのだ。
自然力の偉大さというものをつくづく感じさせられる。
だからそれを克服するときの喜びは大きい。
そこで、船旅をしていると赤道を越えるときには必ず大きな儀式を行う。
海の神ネプチューンにあやかるわけだ。
その日、すわりあわせた乗客にその儀式に参加するのかと訊いて見た。
「あら、私はこれまで30−40回ほど赤道を越えているから、
あんなのは興味ないの。」
びっくりしてよくよく訊ねてみたら、彼女は南アフリカの出身なので、
カナダと南アフリカを飛行機で何度も往復したという。
飛行機という代物は便利であるが、旅行からロマンを取り去ってしまう。 |