大発見
ここで面白いエピソードを披露する。
ダンカンはそのころ自己免疫学の実験に精をだしていた。
ネズミにある種のホルモンを注射してその反応を観察するわけである。
理論によると1時間ほどでその反応が現れるはずなのに、まったく変化がない。
何度くりかえしても同じ結果であった。
ある金曜日、またもやその実験をくりかえしていた。
ただ、この日はかってがちがっていた。
ニュージーランドの法律で、金曜日6時以降はアルコホールを販売してはならないことになっている。
そこで全ての酒飲みは時計が6時を打つ前に酒場にとびこみ、ビールのジョッキを両手でかかえきれない
ほど確保し、そのあと時間をかけて楽しむのがならわしであった。
そこで5時45分、ダンカンのグループはネズミに注射をほどこすのももどかしく、居酒屋に走った。
思う存分ビールをたのしみ、3時間ほどもたってからようやく、実験室にもどった。
おどろいたことに、ねずみに反応がおきていたのである。
つまり、そのホルモンは通常より反応時間が遅いタイプであったのだ。
ダンカンは禁酒法のおかげで大発見をしたのである。
残念(いや、幸い)ながら、その金曜日6時禁酒法は廃止されたそうだ。
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