親愛なるワトソンへ、
太平洋にのりだして4日後、ハワイのマウイ島で朝歯を磨いていたら、口中で硬いものを感じた。
なんと歯のかけらである。
詰め物をしていた歯の一部分がかけたらしい。
これは僕の歯科医の責任である。
いや、いや、話を最後まで聞いてくれたまえ。
これにはれっきとした理由がある。
僕はこの歳になっても、全て自分の歯を保持しているというのが自慢である。
そのために朝晩歯磨きをおこたらず、4ヶ月ごとには定期健診という気の使いようである。
ところが、半年まえに奥歯が一本壊れた。
まるで使い古しの陶器がぶっつけもしないのにおのずから砕けたような様だった。
歳のせいといえようか。
そこで、僕はその場所に人工歯を移植するように要求した。
15年ほどまえからその技術が可能になったのは僕も知っていて、もし入歯が必要になったら、
ぜひそれをやってみたいと思っていたのだ。
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