087 帰国したホームズ(盲導猫はいない)



ホームズ殿


たしかに、盲導犬とは一心同体なのだから、離れられないのだね。

というのは、くだんの 小四郎青年がぼくの信用をかちとるために「犬よりすぐれた猫の点」について
奮闘してくれたことは記憶に新しいだろう。
小四郎青年が「猫には犬よりすぐれた点は皆無です。理由は盲導猫が存在しないことです」
なんて答えられたら、ぼくは怒ってしまっただろうか?
そんなことはない。

ぼくは喜び勇んで、小四郎青年に猫のぼくの生活内で占める役割を力説して、それはそれで楽しかったと思うよ。
猫と犬を比較するなんて、それこそ、ナンセンスというものだ。
だからだね、小四郎青年は物事をはぐらかさない真っ正直な青年であると認識したわけだね。
だから、ぼくは心躍るほど嬉しかったと言うわけだよ。
彼とのこころあたたまる交信が懐かしい。

今はホームズの船旅の話で充足している。
小四郎くんだって、喜んで読んでくれていると思うよ。

ワトソン


またたび館トップページへ戻る