親愛なるワトソンへ、
おいおい、ちょっと落ち着いてくれたまえ。
僕が船上で殺人事件を解決したのでは、と期待されるのは光栄なのだが、だからといって客観的な思考力
を失っては困る。 航海中一日を失ったというのは自然科学にかかわる出来事だよ。
(あの明智小四郎という若者なら
すぐインターネットサーチで
ただしい答えを探し出すであろうに。
助手として使い物になるかもしれないよ。)
種をあかすと、東サモアのパゴパゴからフィージー島のスバに向かう途中に、船は日付変更線を通過したのだ。
ジュール ベルヌの小説“80日間世界一周”おもいだしてくれたまえ。
あの主人公は日付変更線を西から東に旅行していたので一日余分に経験することになった。
僕の船は東から西に航海していたので一日失ったわけだ。
飛行機で旅行してもおなじ経験をするのだが、あれは時差と称してかたづけてしまうのであまり意識にのこらない。
ところが太平洋をのんびり航海していて、船内で毎日配布される日報が10月11日(木)から10月13日(土)に
日付がとぶと、やはりびっくりしたね。
失われた10月12日、金曜日であった。
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