061 ホームズ旅行中(ワトソンより明智君へ)


明智小四郎くん

君からの、突然のメールに非常に驚いている。
老人をいたぶるイタズラメールであろうかと猜疑心を抱いた事をまず、告白する。
インターネット上での、悪事が横行していることは僕とて警戒はしている。
たとえば「ホームズが旅行中に事故にあって、とりあえずの送金を必要としている」
なんて、秘密機関と称するところから言われたら、あわてて銀行に飛んでいくかもしれない。
しかし、今のところはそのような問題ではないようである。

まず、我々ホームズとワトソンの昔の栄光を思いだしてくれたことに感謝をのべる。
君の調査で理解してくれたであろうが、我々はまったくの自由な隠居生活を送っているのだ。
国際犯罪がらみの捜査なんて、とんでもない。
ホームズは船による長旅を楽しんでいるようだし、ぼくは猫三昧を満喫している。

明智小四郎と名のる君を一喝することも、無視することも、どちらも考えてみた。
またまた、白状してしまうが、ホームズ留守中は寂しくて身が持たない。
それから、明智小四郎と名のる君に対しての好奇心をどうしても押さえられないことを、
また告白する。
もう、ぼくは最初のメールで三つも告白したのだ。
君にたいする猜疑心、感謝、好奇心。

老いたるワトソン

 

 




 


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