058 二度誕生した婦人(84歳の実母に会う)








     

     親愛なるワトソンへ(5)

     そこでビリーはすぐ一度もあったことのない生母に手紙を書いた。 
     すぐ電話で返事がきたという。 
     そして84歳の母と60歳の娘の再会が実現したのだ。 
     会ってみたら、自分と顔も体つきもそっくりなだけでなく、教職についたというのも同じ、
     政党の好みも同じ、とぴったり合ったそうだ。
     ビリーを手放したのは、未婚で妊娠したからである。 
     彼女を里子にだしたのち、その男性と正式に結婚して家庭をもち、さらに娘を産んだそうな。 
     だから、ビリーは60歳にして、実妹がいることをしったのである。 
     生母はいったそうだ、「わたしはあなたにいつかあえるようにと、毎日お祈りしていたのだよ。」 
     彼女は2年後に86歳で亡くなったという。

     エルバによるとビリー婦人はめったに自分の境遇については他人に話さないので、ぼくの質問に
     あんなにはっきり応答したのは、よっぽど心安く感じたのでしょうと。 
     ぼくはビリーのとても貴重な人生を垣間見ることをゆるされて、とてもありがたく、豊かな気持ちに
     なったというわけだよ。

     ところで、ぼくは長い旅にでかける。
        以前から計画していた、太平洋航海だ。
            帰ってからの土産ばなし期待してくれたまえ。 


     ホームズ

 


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