親愛なるワトソンへ(5)
そこでビリーはすぐ一度もあったことのない生母に手紙を書いた。
すぐ電話で返事がきたという。
そして84歳の母と60歳の娘の再会が実現したのだ。
会ってみたら、自分と顔も体つきもそっくりなだけでなく、教職についたというのも同じ、
政党の好みも同じ、とぴったり合ったそうだ。
ビリーを手放したのは、未婚で妊娠したからである。
彼女を里子にだしたのち、その男性と正式に結婚して家庭をもち、さらに娘を産んだそうな。
だから、ビリーは60歳にして、実妹がいることをしったのである。
生母はいったそうだ、「わたしはあなたにいつかあえるようにと、毎日お祈りしていたのだよ。」
彼女は2年後に86歳で亡くなったという。
エルバによるとビリー婦人はめったに自分の境遇については他人に話さないので、ぼくの質問に
あんなにはっきり応答したのは、よっぽど心安く感じたのでしょうと。
ぼくはビリーのとても貴重な人生を垣間見ることをゆるされて、とてもありがたく、豊かな気持ちに
なったというわけだよ。
ところで、ぼくは長い旅にでかける。
以前から計画していた、太平洋航海だ。
帰ってからの土産ばなし期待してくれたまえ。
ホームズ
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