054 二度誕生した婦人(謎めいた言葉)








     


     
      親愛なるワトソンへ(3)

     そこで、ぼくは軽いつもりで 「どういうなりゆきで誕生日が二つもあることに
     なったのですか?」と質問した。 
     控えめな老婦人ビリーは淡々と話してくれた。

     「わたしは9月が誕生日だと長いことおもっていました。 
     ところが18歳になったころ出生証明書を入手することになり、それで、実は7月8日に
     サスカチュワン州(カナダの中央平野で、バンクーバーから1000キロも離れている)でうまれ、
     2ヶ月後におとなりの州であるアルバータ州のエドモントン市にもらわれたのだ、というこ
     とがわかったの。 
     だから私が長いこと誕生日だと思っていた日付は、正確には生まれた日付ではなく、もらわれた
     日付だったというわけ、、、。」 そして、謎めいた言葉でビリーは締めくくった:
     「幸い、私はあとで生母に会うことができました。彼女は84歳でした。でも、考えてみると、
      もらわれて幸せな生活だったと思うの。でもそのずーっとあとで考えたことだけど、もらわれな
      くても、それはそれで幸せだったろうと思うの」

     ワトソン博士、君は老婦人ビリーの謎めいた言葉「、、、貰われて幸せだった。けれども貰われ
     なくても幸せだったと思う」を、どんな風に推理できるかね?

     ホームズ

 


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