親愛なるワトソンへ(1)
「親戚筋から戻された二匹のうちの一匹がベアの座をかすめ盗ったのだ。
これって、事件だよ!」だって?
親愛なるワトソン博士よ。君のところでは猫どもに関する事件がまるで雨後のタケノコだね。
次から次に出てきて、きりがない。
今日は、ぼくの最近出会った珍しいことをはなさせてくれたまえ。
まあ、事件ではないが、いやいや、大事件というべきかもしれない。
解決はとっくにしているが、めったにない実話なのだよ。
随所、随所でワトソンに推理させてやるのも酔狂として面白いかもしれない。
暇を持て余している隠居生活の老人同士、楽しもうではないか。
この前に、エルバのお宅にイースターの晩餐によばれて、仕入れた話なのだ。
エルバというのは、君が想像するところの『バロック調の美女』カレン嬢の母君である。
正真正銘の金髪碧眼の美女であり、ぼくが崇拝してやまない女性である。
今は教育者としての生活を引退して夫君と外遊を楽しんでおられる。
こんな平凡な出だしで、興味がわかないかもしれないね。
ホームズ
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