049 四つの証言(厄介こそ人生の味)



ホームズ殿

厄介こそ、人生の真の味だとぼくは悟ったよ。
厄介のタネの猫たちの影響だ。
「たった一人の人にでも、全面的に受け入れられていれば、
  人間は生まれた甲斐がある」と、ある婦人が言ったのを
聞いたことがあるよね。
   (例の『谷間の百合』だと思ってくれても良いよ)
究極の愛が欲しいのだよ人間は。猫もまた然り。

どの猫も、どんなに寝こけていても、ぼくの訪問には全員、
起きだして迎えるのだ。(スミレだけは逃げるが)
餌とは関係なく、親愛の情からだよ。
猫は、正直で嘘がない。
だから、ほっとするのだ。
反面、甘えて欲しい時に、そっぷを向いていることもある。
そんな時は、やっこさんたち、何か気が向かない事情があるのだろう。

庭つきの猫ルームに出かけて行くと、一斉に挨拶に来るが
ひとしきりの挨拶がおさまると、それぞれに距離をおいてぼくの回りを取り囲んで寝そべる。
ぼくは日陰を選んで読み物をしたり、居眠りしたりする。
折りたたみの寝椅子で横になっていると、うえに上がり込んで来るのが2匹ほどいる。
この2匹はぼくが選んだ猫というわけではなく、ぼくに対する親しみの正直な願望から
行動に出るのだ。

人肌の温かさを慕ってというわけではない、真夏でも来るのだから。
プリンは必ずぼくの足の間に後ろ向きに座る。必ず後ろ向きでシッポをぼくに向けてだ。
甘えるというより、敵が来たら守ってやるという姿勢である。
ベアは前向きにぼくの鼻先に陣取る。本は邪魔だとのたまう。
ベアは一番でなければ機嫌を損なう猫である。
挨拶は全員のトップを切って飛び出してくる。
ところが、最近、ベアに不祥事がもちあがっている。
というのは、親戚筋から戻された二匹のうちの一匹がベアの座をかすめ盗ったのだ。
これって、事件だよ!

ワトソン


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