親愛なるワトソンへ、
君は相変わらずせっかちだね。
「三毛猫のスミレは“す”という音が魔女から呪いをかけられたみたいで
嫌いなのだ」と、まるでハリー ポッターの弟子のようなことを言わない
でくれたまえ。
むしろ僕はフロイトとまでいかなくてもパブロフかユングのほうを選びたい。
スミレの行動にはなにか原因があるに違いない。
さて証言その一 母猫の言葉である。
「娘はわたしの2度目のお産で3匹うんだ中の一匹でして、あの当時はごたごたが重なって、、、
もの心ついて、娘は怒りっぽくて持て余したものでした」 ここに鍵がある。
そのごたごたとは何事だったのか?
人間の子供でさえ、大事な成長期に親の注意を受けないものは問題児になる傾向が強い。
産んだ子猫が3匹といっても、同じ屋根の下にはすでに10匹以上の猫がすんでいる。
その猫どもの間の軋轢(あつれき)は?
しかしスミレは他の猫どもとは仲良くやっているというから、この解釈は不適であろう。
君に対してだけ恐れおののくというのに鍵があるかもしれない。
つまり、君が自覚しないうちにスミレをいじめるようなことをしたのでは?
たとえば、餌の時間に大勢の猫が君の周りによってきて、君が不注意にもあとずさりしたときに
スミレの尻尾をドンと踏んだのでは?
ギャという悲鳴を耳にして振り返ったときにはそれがどの猫が発したのかわからなかったはず。
幼児期の悪い経験は人間ならず猫の行動様式にあとあとまで続くネガティブな影響をあたえる。
「祖母猫の“べあ”の証言の考察はこの次に。」
ホームズ
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