040 四つの証言(犬のことなんだが)




  親愛なるワトソンへ 

  
  証言の1は、じっくり参考にさせて貰うよ。
  まず、ぼくに以前に読んだ犬のことを話させてくれたまえ。

  犬の展示会に出せるぐらい見事な純血の犬がいた。 
  毛並みも姿勢も非のうちどころがないが、たった一つどうしようもない
  欠陥があった。 
  丸くくるりと巻き上がっているべき尻尾がいつもだらりと下がっているのだ。 
  その尻尾さえ直れば優勝は間違いない。 
  
  そこで飼い主はその犬の専門家に解決法を依頼した。 
  専門家がその家にやってきて観察した結果、原因を解明することができた。 
  そこの主人は毎日飲んだくれて帰宅する。 
  自宅のドアをあけるなり、その犬の名前を大声でよんで、けったりなぐったりして、
  たまった鬱憤をはらすのだそうだ。 
  そこで、犬は自分の名前を聞くと、尻尾を股の下にまるめてこそこそベットの下に
  隠れる習慣になったそうだ。
  つまり犬は自分の名前に全く誇りを失ってしまったのである。

  解決策:(1)第一に犬の虐待を中止すること。
       (2)犬に新しい名前を与え、その名前を呼ぶと同時に、必ず褒めてあげること。 

  その結果、犬は自分の新しい名前を聞くと、誇りをもって、尻尾を高々とあげるよう
  になり、見事にコンテストで優勝したそうだ。

  これからマルティニを楽しみながらスミレの母親の(証言その1)に考えをめぐらすことにする。 
  (パイプはやめたのだよ。) 
  ワトソン、君は関係者の証言をもっと集めてくれたまえ。

  
  ホームズ

 


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