034 後日談(またカラス)

 

 

   


  

 


   


   

    親愛なるワトソンへ 

   夕食のまえ、僕は庭の椅子に座って晩酌をするのが習慣であるが、またしてもカラス
   が姿をあらわす。 
   それは目前にある姫桜の枝にとまって身づくろいをはじめる。 
   翼を片方ひろげ、くちばしで羽を一枚ずつ梳く。 それから片足をあげて柔軟体操の
   ようなことをする。 
   それがあまりにも優雅なので、僕はうっとりと見惚れる。 
   ところが、その仕草は実はカラスのエチケットの表現なのである。 
   僕が晩酌を楽しんでいるあいだは、露骨に餌をねだることをせず、 代わりに自分の
   姿を見せびらかすことによって、僕の慈悲心を喚起しようというわけである。 
   というのも、僕がしばらく見とれていると、最後にはカラスもしびれをきらして微かな
   声をあげて餌をねだる。本当に可愛い。

   それからドラゴンボートに関する短文を楽しんでくれて嬉しい。 
   僕は一般的に書くことが苦手だが、表現したいことがある時はキチンと書ける。 
   散文人間である僕にとって「無駄も不足もない文章」というコメントは最高のほめ言葉である。 
   ありがとう。 
   
   ところで今日はアウトリガーの練習から帰宅したところだ。 
   正直なところこれのほうがドラゴンボートよりもスリルがあるのだよ。 
   そのうちアウトリガーについても書く機会があるだろう。

   ホームズ


またたび館トップページへ戻る