032 後日談(ホームズとカラス)

 




  

 

 

 

 




    親愛なるワトソンへ

   茶太郎のケースが解決したそうで、とても満足している。 
   「愛情表現か?」それとも「灯りに集まる虫にたいする興味か?」僕も迷ったが、
    君がその後の観察をもって前者が正解だと確認したとのことで、迷宮入りにならずにすんだ。  
    探偵家業から引退したとはいうものの、名声を保持することができて安堵した。 
    動物も植物も愛情をそそいでやると、それに応えるものだ。 
    多忙な人間はそれを見過ごしてしまう。

   ところで、僕のカラスのことをほめてくれて、とても嬉しい。 
    先日もカラスどもが3度ほど餌をねだりにやってきた。 
    つがいのカラスが窓の外の枝にとまり、まずは枝でくちばしを研ぐ仕草をする。 
    それから僕に見えるところでお辞儀の動作とともに無声の鳴き声をあげる。 
    僕がおもむろに餌をカラス用の皿にのっけてやる。 一度に食べきれない餌があると庭の
    あちこちに隠す。 
    そして僕から餌をもらえない時はその隠し場所から餌を取り出すのである。 
    たまに食指のうごかない餌があるとそのまま皿に残したりするが、それでも他人(他鳥)に
    とられるのは嫌らしい。 
   
    一度カモメが残っている餌を見つけて舞い降りて来たことがある。 
    その時のカラスの防衛の凄まじいこと。 
    自分の3倍もありそうなカモメを追い払っていた。

    ホームズ


 
     


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