026 恐怖の舟(雨降りの寒い天気)

 

 

 

 

 

 

 

 

 



  (024)から続く

   
   ここバンクーバーは雨降りの寒い天気であった。
   それでも熱心なメンバーは18人ほど集まった。
    練習につかわれる場所はフォースクリークと呼ばれていて、バンクーバーのダウンタウンに向かう
   3つの橋の下を占める入り江である。
    陸地にかこまれているため水がおだやかで初心者の練習に最適である。

    この日にかぎって、カレン嬢と僕は成り行きで最後尾に座ることになってしまった。
    ボートが水上にでてからコーチがアナウンスした:「今日はバラード橋の向こうを越えて北西領域に行く。
                           この初心者のコースでは橋の向こう側にでてはいけ
                           ないことになっているのだが、誰も反対しなければ
                           そうすることにする。 岸に近いコースにとどまる
                           ようにするから 心配しなくてもよい。」

    橋の向こう側の水面というと太平洋につながる入り口である。
    北と南の海岸はそれぞれイングリッシュ湾とスパニッシュ岸と呼ばれていて、その昔どこの国にも属さ
    なかったこの海域でイギリス船とスペイン船が邂逅し、領地争いをしたという歴史がある。
    昨年秋の練習のさいそのあたりを漕いだことがあったので、僕は心配しなかった。
    そのときは青空のもとで海鳥があちこち波間にゆられていて、のどかな風景だった。
    この日の天気は悪かったが、コーチに対する皆の信頼はつよかった。


  

     


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