021 恐怖の舟(バロック調の美女)

 


  ホームズ殿

 「興味を失ったかも?」とんでもない、益々、興味津々である。
 ロマンスの香りがまったくないという所ではがっかりしたが、
 これとて、もしかしたらぼくの目をあざむく作為、、、、、
 いやいや、ぼくならやりそうな小細工だけれども、ホームズ、
 君は全くのゼントルマンだから、そんなことは、ないんだよねえ。
 
  君の詩に対する明解な解釈はぼくにも分かるような気がするが、
 カレン嬢を的確に表現するところを、“時折けむるブルーの瞳は
 現実をさまよい切れないもののみがもつ永遠への憧れを宿す、、、”
 なんて言ってくれたら、年甲斐もなく、ぼくはバンクーバーに飛ん
 でいくね!

 冗談はさておき、バロック調の美女であることには間違いないわけだ。
 くだんのぼくに白百合を送ってくれる女性を“谷間の白百合”とひそかに
 命名しているのだ。“谷間の白百合”は最後の一本が咲いたので貰いに来て
 くれと言ってぼくを呼びつけたのだ。
 なんだかんだ言ってぼくに会いたいのだよ。
 これが、恋情というものだよ。
 ホームズ、君だって枯れてしまってはいけないよ。
 「恋せよ、ロージン〜」だよ。
 “おもいがけない経験”なるものを、かたずを
 飲んで待っている。

 ワトソン



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