親愛なるホームズ殿
ぼくの報告が君をがっかりさせてしまって申し訳ない。
茶太郎に嫌われてはいないという君の推理に有頂天になっていたので、別の推理であわてたのだ。
ぼくの言い訳を聞いてくれたまえ。
ぼくはね、以前に君が野生のカラスを手なずけたエピソードに感銘を受けたのだ。
カラスを、ギャアギャア鳴きわめかずに餌をねだるように仕込んだ君の手際には心底感心した。
茶太郎に好かれていないという長い間の思い込みを反省したのだ。
他者とつきあう場合の忍耐と執念に欠けるぼくの性格を反省してのことだった。
科学者のはしくれとしてね。
しかしに、「科学者のはしくれ」という言葉で君に激励されてもね、、、、
ぼくは、ロマンを愛する詩人のこころをも併せ持っているつもりなのだよ。
それから、お役所勤めの気風をあなどるのは、ホームズ、君のよくない癖だよ。
なんか、怒ってないかい?
カレン嬢ともめているとか?
女性というのは永遠にあこがれの存在だね。
実はだね、ぼくはある女性から愛されているのだよ。
仮にK嬢としておく。
K嬢はね、ぼくの誕生日のその日のプレゼントのために
庭に大輪の白百合を栽培してくれている。
女性に愛を捧げられるということは、
素晴らしいことだよ。
K嬢はぼくに香り高い白百合をプレゼントする
ことが生き甲斐なのだよ。
ひとりの女性の気高い愛にぼくは感動している。
今年は、天気が続いて誕生日の一週間前に花びらが
ふくらんできたのだね。
あわてたK嬢は一週間前にプレゼントしてくれたね。
ここまで、ぼくは秘密をうちあけたんだぜ、カレン嬢
のことちょっとだけオシエロヨ。
雰囲気だけでいいから、どこまで進んでいるか
なんてことはいいからさ。
ワトソン
|