009 茶色の研究(猫を分類分け)


親愛なるホームズ殿へ

「君のたゆまね観察がこの僕の推測が的をえているかどうか
を決定する鍵を提供するのである」と言われてぼくは奮い立
ったことを告白しないわけにいかない。具体的には敷物をも
って猫達のエリアに身を横たえて、色々と考えてみた。青空
のした、木々にさえずる小鳥の鳴き声を近くに聴きながら猫
の仲間になった。心底しあわせで平穏な時間だったね〜。



猫たちは大きく別けて、ぼくのことを飼主として慕ってくれ
るグループと距離を置くグループの2つに分けられる。慕っ
てくれるグループにも格差があって、声を聞けば駆けつけて
くるのと、何となく回りに寄ってくるのとがある。駆けつけ
て来るのにもトップでなければ気難しくなるのと、よいボジ
ションを確保しようという(愛撫を受けられる位置)のと、
隙間ができた時にそっと忍び寄って来るのとがいる。飼主の
ぼくに距離を置くグループ内にも格差はあって、遠巻きに静
観しているのと、絶対にぼくを拒絶して逃げて行ってしまう
のがいる。この逃げて行くのは「三毛猫のすみれ」という奴
だが、ぼくの姿が見えるうちは食事の席にもつかない。
「お前はアホか?」愛猫家として、はしたない言語を発した
ことを恥じ入る。茶太郎が済んだら、次のクライアントはす
みれだね。



脱線したので茶太郎に戻す。本件の茶太郎は深夜にガラス窓
を叩くという奇行をホームズに相談したのだが、彼はすみれ
の次に人間になつかない猫なのだ。人間に対して不信感をも
ってはいるが、猫たちの間では元気で普通なのだよ。不信感
を立証する出来事としては、虫下しの錠剤を絶対に飲み込ん
でくれないことがあげられる。歯をくいしばって口を開かな
いのだよ。すみれは察して逃げてしまう。あとの猫たちはゴ
ックンと飲み込んでくれるのに。



ここで混乱をきたすことをホームズに告げなくてはならない。
先に飼主のぼくに対する猫たちの親密度をグループ分けで説
明したが、ここにもうひとつのグループ分けを報告せねばな
らない。それは猫同士の力関係で、つまり一族のなかで強い
か、弱いかの分類である。茶太郎には敵はいない。母猫の茶
ピーの親猫は確実によいポジションを確保する「ぷりん」で、
茶太郎はお利口なプリンの孫猫なのだ。また従兄弟の「はな
ちょ」とは大親友でいつも舐め合ったり喧嘩ごっこをしてい
る。先輩格の白猫の「ちる平」ともすこぶる良好な関係を持
っていて楽しそうなのだ。オス猫は以上の3匹なのだが、い
ずれもリーダーという風格の猫たちではない。なにしろ、母
と祖母が健在なのだから仕方ないのかも知れない。








ついでに、この3匹とぼくの付き合い方を述べよう。茶太郎
は愛想なしだから取り付く島もないが「はなちょ」はもとも
とは「鼻くそ」という名前だったのが、人聞きも悪いので、
婉曲に「はなちょ」にした。もとは彼と一緒に生まれたオス
が口の横に斑点があったので「よだれ」と名付けたので、対
として鼻の頭に斑点のあるところで「はなくそ」という美し
くない名前になった。彼は生まれた時から元気なわんぱく坊
主という雰囲気の子猫だった。子猫の時分はフェンスの目を
くぐって、出たり入ったりして遊んでいたが、体がくぐれな
くなった時に自然の成り行きでフェンス内で暮らす猫になっ
たというわけがある。今でもはなちょに対しては、腕白坊主
を扱うように乱暴に扱って楽しんでいる。たとえば掃除機で
体を撫で回して毛を吸い取ってやる。猫は掃除機が嫌いなも
のだがはなちょは喜んでいるのだよ。だから、尻尾を引っ張
ったり、ぎゅうと抱きしめたり乱暴に扱えば、目を輝かして
喜ぶ。よだれは子猫の時に亡くなったが同時に3匹生まれた
あとの一匹がメスの三毛猫すみれなのだよ。あこがれの三毛
猫が生まれて大喜びしたのにすみれは人間が嫌いなのだ。絶
対に近づいてこないし、それよりぼくの顏を見れば逃げるの
だよ。ちなみに、はなちょとすみれの母猫は黒毛の「黒ピー」
でその親は一番に可愛がられなければ機嫌が悪くなる黒猫の
「べあ」という。















もう、しゃべりだしたら止まらない。ぼくは趣味の鉄道模型
をつづけるのには具合わるいくらい目の調子がよくないのだ。
これから大学病院の眼科に行ってくる。

ワトソン

ワトソン















 


 

 

 


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