004 茶色の研究(猫の変装)

  親愛なるワトソンへ

  奇怪な出来事の主人公である茶太郎の家族背景はよくわかった。 
  ところで、茶太郎が君の部屋の窓を深夜に叩いたというのは、
  たった一度の出来事であるのか? 
  それとも繰り返しておこるできごとなのか?  
  どちらかね?
  もし、それがたった一夜の出来事であったとして、その場で君
  は懐中電灯と拡大鏡を手にしてあたりを捜査したかね? 
  というのも、窓を開けたら見えたのは茶太郎だった、と君は報
  告したが、実は茶太郎ではなくて他人の空似(他猫の空似とい
  うべきか)だったかもしれない。
  あるいは、茶太郎はそこにいたが、そのほかに誰かが窓の下に
  隠れていて、実際に窓を叩いたのはその“他の誰か”だった可
  能性もある。

 人間の先入観というものはたち(性質)の悪いもので、思い込
 みで判断してしまう。同時に、変装して捜査をまどわすという
 のは犯罪者の常套手段であるが、猫が変装するというのは奇想
 天外なので、この件ケースにかんしてはその可能性を破棄する
 ことにする。ところが茶太郎が繰り返して深夜に君の寝室の窓
 を叩くなら、調査のスコープは広がってくる。茶太郎が窓を叩
 くたびごとに、君は状況を観察してなんらかの共通性を見出す
  ことができるはずだ。君のその後の観察の結果は?

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