親愛なるワトソンへ
奇怪な出来事の主人公である茶太郎の家族背景はよくわかった。
ところで、茶太郎が君の部屋の窓を深夜に叩いたというのは、
たった一度の出来事であるのか?
それとも繰り返しておこるできごとなのか?
どちらかね?
もし、それがたった一夜の出来事であったとして、その場で君
は懐中電灯と拡大鏡を手にしてあたりを捜査したかね?
というのも、窓を開けたら見えたのは茶太郎だった、と君は報
告したが、実は茶太郎ではなくて他人の空似(他猫の空似とい
うべきか)だったかもしれない。
あるいは、茶太郎はそこにいたが、そのほかに誰かが窓の下に
隠れていて、実際に窓を叩いたのはその“他の誰か”だった可
能性もある。
人間の先入観というものはたち(性質)の悪いもので、思い込
みで判断してしまう。同時に、変装して捜査をまどわすという
のは犯罪者の常套手段であるが、猫が変装するというのは奇想
天外なので、この件ケースにかんしてはその可能性を破棄する
ことにする。ところが茶太郎が繰り返して深夜に君の寝室の窓
を叩くなら、調査のスコープは広がってくる。茶太郎が窓を叩
くたびごとに、君は状況を観察してなんらかの共通性を見出す
ことができるはずだ。君のその後の観察の結果は?
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