002 茶色の研究(やってみるかい)




 
  親愛なるワトソンへ、

  久しぶりに君から便りがあり、安心した。医業から
  引退してもう3年になるとは、時がたつのは本当に
  矢のごとし。視力が衰えたとなげく君だが、僕の方
  は聴力の方に衰えがきて、お互い様というところだ。
 
  ところで、君の猫に関する相談だが、僕のかつての
  名声をおもいださせてくれて嬉しい。君が貢献して
  くれたケースも沢山あった。ところで、事件調査の
  基本を君はまだ記憶しているかな?第一は事件現場
  の調査である。拡大鏡を手にして事件現場をしらみ
  つぶしに調べている僕の写真がよくロンドン新報に
  のったものだ。 
 
  ところが、現在バンクーバーで隠居の僕は、弘前に
  住む君の自宅で発生した奇妙な出来事を拡大鏡をも
  って調査するというわけにはいかない。そこで、そ
  この住人である君が調査の前線にたたなければなら
  ない。僕は間接的なアドバイスをあたえるだけだ。
  衰えたのは視力だけで、頭脳のほうはまだ大丈夫と
  提示する最高のチャンスではないだろうか?  
  やってみるかい、ワトソン?

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